2015年8月9日日曜日

『反知性主義』森本 あんり

 新潮選書。副題『アメリカが生んだ「熱病」の正体』。
 反知性主義は、反インテリ、もっと正しくいうと、インテリが権力や権威と結びつくことに対する嫌悪の感情といえばいいのだろうか。今のアメリカにもそういう部分が多く見られるのであろうが、本書は現代のアメリカについては多くのページを割いていない。アメリカにヨーロッパから入植してから何度か起きた信仰復興運動(リバイバリズム)の歴史的背景になどについて主に書いている。だから「熱病」というのもたぶんリバイバリズムのことを指すのであろうし、反知性主義というのもそのリバイバリズムのうねりを生み出すに至ったアメリカ人の精神構造を指すのであろう。
 リバイバリズムは、従来特別に教育されたインテリしかなれなかったキリスト教の伝道師(例えば牧師など)に変わって、十分な教育を受けていない伝道師による信仰を復興させる運動といっていいのだと思う。信仰は特別な人に起こるのではなく、誰でも平等に起きるものなのだということである。アメリカでのキリスト教の普及は、このリバイバリズムと切っても切り離せない。アメリカにキリスト教が入ってくると、ヨーロッパとは違う信仰の形ができあがった。それはどのようにできあがり、どういう形のものだったのか。本書に主に書かれているのは、このアメリカにおけるキリスト教の歴史である。中身は結構入り組んでいて、プロテスタントとかピューリタニズム、クエーカー、バプテスト、ユニテリアンなど、いろいろな派閥が絡んでいてややこしい。
 おもしろいと思ったのは、アメリカにおける政教分離の精神が、この反知性主義とも関係していることだった。自由と平等を重んじる精神もまた、反知性主義とは無関係ではない。本書の帯には「いま世界でもっとも危険なイデオロギーの根源」と書かれているけれど、必ずしも筆者は反知性主義をこのような主義主張だとは捉えていないのではないかと思う。反知性主義にはプラスマイナスどちらの面もあるのだろうけれど、筆者の考えはどちらかといえば中立のように感じた。そして私も、反知性主義は必ずしも悪い面だけなわけではないという印象を持った(ちょっと嫌だなと思う点はあったにしても)。いずれにしても、アメリカにおいてどうしてキリスト教がこれだけ普及しているのかだとか、アメリカ人の平等意識の高さはどのように生み出されたのかを考えるとき、本書の内容はその答えの一端を教えてくれる。

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