『たまのこと』paniyolo

 2015年。
 パニヨロこと高坂宗輝によるギターアルバム。17曲中12曲で、中村大史のギター(or マンドリン)によるサポートが入る。まあ、ギター・デュオといっていい。高坂がメロディを弾いて中村が伴奏をしているというスタイルは、おそらく成功している。前作『ひとてま』私の記事)のときにあった、どこか空中をたゆたうようなつかみどころのない不安定さ(それがまた魅力であったのは確かであるが)がここではかなり減じられて、しっかりとしたメロディが際立つ作品に仕上がっている。彼らの弾く音楽はどれもゆったりとしていて僕の心を静めこそすれ、決してかき乱さない。それなのに空気のようにそこにあるのではなく、かたちあるもののように僕のまわりの空間をしっかりと支えている。その微妙な存在感が心地よい。
 このアルバム、実はギターの音もいい。ギター自体がいいという意味ではなく、まるですぐ耳元で奏でているかのような臨場感がいい。入間にあるguzeri recording houseというところでレコーディングされたらしい。古い木造住宅に響く空気感、それらも全部ひっくるめて録音されたギターの音は、やわらかく僕をその空間へ誘う。

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