2017年4月25日火曜日

『経済学のすすめ』佐和 隆光

 岩波新書。副題「人文知と批判的精神の復権」。
 日本では文系が軽視されている。国の発展のためには理系教育をこそ進めていくべきで、大学に文系学部なんていらない。そんな論調がある。文部科学省までそのような通達を出していたりするし、大学入試やカリキュラムもそういった流れに沿った変化をしてきた。だが、それは間違いであると著者はいう。人文科学系の勉強をすることなく育った理系人間だけではイノベーションは生まれない。さらに、自由主義、民主主義、個人主義という近代西欧の価値規範をこの国に根付かせるためには、人文知と批判的精神の復権が必要であると主張する。
 翻って今の日本の経済学はどうなっているだろう。アメリカやヨーロッパと異なり、数式を追ってばかりで人文知とは無縁な姿がそこにはある。それではいけない。今こそ、モラル・サイエンスとしての経済学の健全なる復権を願うと、著者は本書で述べている。
 著者のいうことは大筋としてもっともであると感じた。しかし、結論がちょっと唐突に感じられる論法が随所に見られ、主観的に過ぎる部分もあり、いくぶん論理の組み立てが雑なような気がした。また、本書のタイトルは『経済学のすすめ』であるが、著者は経済学をすすめることよりもむしろ、副題である「人文知と批判的精神の復権」をこそ主張したかったんだと思う。ちょっと論理展開に難はあるけれども、読み物としてはおもしろかった。

0 件のコメント:

コメントを投稿