2017年12月22日金曜日

『遺言。』養老 孟司

 新潮新書。
 齢80にして、この世に言い残しておきたいことがあったらしい。と聞けば、どんなお説教臭い言葉が並んでいるのだろうとも思ってしまうところだが、この本はまったく遺言らしくはない。ヒトとは何か。生きるとは何か。社会とは何か。そんなことについて日々なんとなく考えていることを、徒然なるままに綴っている。
 意識と感覚、都市と自然、一神教と多神教。このような対比の中身を考察していくと、ヒトがどういった生き物なのか見えてくるんじゃないか。そしてそういう傾向を持ったヒトが向かっている先はどんな場所なのか。その行き先をはっきりと述べているわけではないけれど、肥大化したヒトの脳が何を志向しているのか、ちょっとは意識しておいた方がいい、と著者は言いたいのだと思う。脳化社会というのが、そのひとつのキーワードになっている。
 科学と哲学の間をふわふわと行ったり来たりしながら、実に興味深いおしゃべりを聴かせてもらっている感じがして、とてもおもしろかった。ちょっとそれは違うんじゃないかとか、根拠がなんだか適当だなあとか思ってしまうところもあったけれど、軽いエッセイだと思うとたいして気にもならない。彼の著書は何冊も手にしたことがあったけれど、その中で一番理解に苦しんだのは、実はベストセラーになった『バカの壁』だった。それに比べると、ずっとすーっと頭に入ってくる。この本は読みやすい(amazonのレビューでは否定的な意見が多かったけれど、私はそうは思わない)。
 それはさておき、著者は今後も生きる気満々である。

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