2018年1月28日日曜日

『憲法と世論』境家 史郎

 筑摩選書。副題「戦後日本人は憲法とどう向き合ってきたのか」。
 戦後行われた、新聞社、通信社、NHKなどによる1200件を超える世論調査を元に、その間日本人は憲法に対してどのような世論を形成していたのかを探る本である。著者の立場は中立的で、憲法に対する私見は極力はさまずに、調査結果のデータを客観的に分析している。
 日本国憲法が戦後70年にわたって変更することなく続いたのは、日本人に憲法を受け入れる素地が整っていたからだと思われがちだが、データからは必ずしもそうではないということが明かされる。高度成長期こそ改憲論議は活発ではなかったが、それ以外の時期は意外と改憲を求める声が多かったようだ。また、現在では改憲といえば憲法第9条に関するものが中心だと思ってしまうが、その他にも天皇制、統治制度(首相公選制など)、環境権、憲法改正発議の条件など、多くの論点が時代時代により入れ替わり立ち替わり俎上に上がってきたことが明らかになる。改憲派を形成していたのが誰かについての分析もおもしろい。戦後すぐの時期においては、今では護憲派の急先鋒である共産党が一番の改憲派であったことは興味深い。また、世論調査における質問の仕方として、憲法一般の改正の意見を問うものと、憲法の特定の条文の改正の意見を問うものとがあるが、前者の問いについての問題点を指摘している。マスコミによる報道の影響や、エリート層(政治家、学者など)の意識と国民の意識との関連性についても検討している。
 憲法を変えるべきか、それとも変えぬべきかという見方ではなく、日本人が憲法をどのように見てきたのかという観点から論じた本として、本書は新しい視点を与えてくれる。改憲派であれ護憲派であれ、本書に目をとおすことによって、戦後の日本人の憲法観の変遷ををたどることは有益であると考える。

0 件のコメント:

コメントを投稿