2018年2月8日木曜日

『無くならない―アートとデザインの間』佐藤 直樹

 晶文社。
 20年以上アートディレクターとして活動してきた著者は、「アートとデザインの間には深くて暗い川がある」と思っている。それはどんな川だというのだろうか。それがどんなものなのかどうか早く知りたい読者を尻目に、著者はマイペースでアートとデザインの間をたゆたう。著者はデザイン側の人間である。それが2012年頃から背丈以上の板に木炭で植物を書き始め、それをどんどんつなげていって今ではそれが100メートル以上にもなるのだという。これはデザインではない。ではこれはアートなのだろうか。
 前半は「絵画の入門」というテーマになっている。絵画とは何なのか。絵とは何なのか。悩みつつも少しずつ前に進んでいく。そうやって著者は絵画に近づいていく。それに対して後半は「デザインを考えない」というテーマになっており、デザインについて考えていく。そう、「デザインを考えない」としながら、思いっきりデザインについて考えている。タイトルと中身のギャップに戸惑うが、おそらくそのギャップが著者のデザインに対する思いを代弁している。最後に、小崎哲哉、大友良英、岸野雄一、細馬宏通との対談が掲載されている。この対談の中で、ようやくアートとデザインの間そのものに対する答えらしきものが提示される。でもそれが正解だとはわからない。著者も必ずしも正解だとは思っていないのではないか。
 アートとデザインの間。それに対する著者の独白に近い逡巡に付き合いながら、読者としてもアートとデザインの間に思いを巡らす。答えを見つけること自体ではなく、そうやって考えていくことこそが大事なのかもしれない。そういう思いを抱いた。

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