2018年3月12日月曜日

『健康格差』NHKスペシャル取材班

 講談社現代新書。副題「あなたの寿命は社会が決める」。
 2016年9月19日に放送されたNHKスペシャル「私たちのこれから #健康格差~あなたに忍び寄る危機~」を書籍化したもの。
 病気になるのは自身の健康管理がなっていないためだ。つまり自己責任だ。などという意見も多く聞かれる昨今であるが、そうではない、との立場から本書は書かれている。 「低所得の人の死亡率は、高所得の人のおよそ3倍」と聞くと、どこか異国の話なのではないかと思ってしまうが、これは日本における2008年に発表された研究結果のひとつである。WHO(世界保健機関)は、健康格差を生み出しているのは、所得、地域、雇用形態、家族構成の4つであると指摘しているのだという。健康かどうかは、自己管理能力の低さではなく、生まれ育った環境や、就いた職業などによって決まるというのだ。
 この健康格差について、本書ではまず雇用や所得、さらには地域による格差を紹介する。そしてそのための打開策としてイギリスが行った食塩摂取量削減の取り組みとその効果や、東京都足立区における糖尿病対策を取り上げる。ここにおいて、不健康な人だけをターゲットにして対策をとる方法よりも、健康な人も健康でない人も関係なく、すべての人を対象にした対策であるポピュレーション・アプローチをとった方が、より有効な結果をもたらすということが示されていることは、なかなか興味深い。その他、番組内で行われた「健康格差」を巡る討論の再現や、著名研究者へのインタビューなどが収録されている。
 「健康格差」を放置していくことは、不健康な人だけでなく健康な人にとっても、しいては社会全体にとって不幸なことなのだということが、この本を読んでよくわかった。

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