2018年5月19日土曜日

『宗教国家アメリカのふしぎな論理』森本あんり

  NHK出版新書。[シリーズ]企業トップが学ぶリベラルアーツのうちの一冊。
 アメリカという国がよくわからないと、ときに感じる。科学の最先端を行っていると思っていたら、国民の結構な割合の人が進化論を否定したりしているみたいだし、最近では科学に対する予算が削られたりしている。世界平和を願っているのかいないのかもよくわからない。アメリカ・ファーストを叫びながら、それってアメリカ国民にとってもよくないことじゃん、と突っ込みたくなることもある。とここまで書いてきて、この疑問って「トランプがわからない」と言ってるのと一緒じゃないか、と思った。
 本書によると、トランプ大統領のような大統領は、アメリカという国にとっては別に珍しい部類に入るわけではないのだという。ジャクソン、アイゼンハワーなど、似たような大統領は今までにもいたらしい。ではなぜこのような人が多くの支持を受けるのか。
 それは特殊な宗教国家としてのアメリカの事情にあるらしい。成功している人は神に祝福されている。祝福されている人は成功する。成功しないのは努力が足りないからだ。極端に言えばこういう論理らしい。しかしキリスト教は、元々は勝者だけじゃなく敗者(という言い方は適切ではないかもしれない)も救う宗教だった。初期のキリスト教は実際受難の歴史を辿ってきて、必ずしも成功者ばかりが信じる宗教ではなかった。ところがアメリカは、この受難を経験していない、つまり幸運にも勝者の論理だけで突き進んでこられた国家だというのだ。なのに今のアメリカ国民は、ラストベルトに代表されるように勝者とは言えない人たちが増えてきた。彼らは、なぜ自分たちは救われないんだろうと自分たちの「負け」を理解できない。キリスト教による「富と成功」の福音、そんな伝統がアメリカを覆っているのだという。
 そしてもうひとつの忘れてはならない伝統が「反知性主義」なのだという。これは勘違いしがちだけれど、「反・知性」なのではなく、「反・知性主義」と解釈すべきだという。つまり知性そのものに対する反発なのではなく、ハーバードに代表されるエリートと政治が結びついて権威となることに対する反発なのだという。そして反知性主義とポピュリズムは相性がいい。
 こんな風にして、宗教国家としてのアメリカを解説しているのが本書である。新書という形式上、著者としては言いたいことをすべて盛り込むことはできず論理の飛躍があったりする部分もあるんだろうとは思う。しかし、単純にアメリカを自由と平等の国だと考えるのは早計すぎる、というのは本書を読むとよくわかる。現代の世界情勢を語る上で、こういったアメリカの特性を知ることは必須の知識であろう。

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