2018年6月16日土曜日

『「大学改革」という病』山口 裕之

 明石書店。副題「学問の自由・財政基盤・競争主義から検証する」。
 昨今「大学改革」という言葉が新聞上を賑わすようになって久しい。ではその「大学改革」の実体とはどういうものなのか。どういう問題点があるのか。大学とはどんな存在であるべきなのか。そのような点について、本書では論じている。
 世界各国の大学の歴史を紐解き、国によって大学がどのような位置づけにあり、どのように変遷してきたのか、詳しく語られる。そしてそれらと比較することにより、日本において大学とはどういう存在であったのか、あるいはあるのかについて、入試選抜の方法や企業の就職慣行、日本の社会保障との関係を念頭に置きつつ、解読していく。
 現在「大学改革」の名の下に行われている教育予算の削減、大学間や大学内の教員に課せられている競争主義、企業活動に役立つ学問をという政財界からの要請。これらが大学における教育、研究に対してどのような弊害をもたらしているのかを明らかにし、今後、日本の大学はどうあるべきかについての処方箋を提示する。
 著者の提言はやや抽象的で理解するのは少し難しい。しかし大学改革における論点はしっかりと整理されており、個々の議論に対する著者の指摘は的を射ている。今後の大学のあり方とはつまり、今後の日本のあり方でもあり、国民生活とも切っても切れない関係にある。その大学の今後を、財界および政界任せにしておいてはいけない。そんな著者の思いが伝わってくる。

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