2018年7月12日木曜日

『共感のレッスン』植島啓司、伊藤俊治

 集英社。副題「超情報化社会を生きる」。宗教人類学者である植島と美術史家の伊藤による対談。
 「わたし」と「あなた」。「わたし」は「わたし」を飛び出して「あなた」になる。そして「あなた」は「わたし」となる。その境界はいったいどこに引かれるものなのだろうか。「わたし」とは「脳」であると思っている人が多いけれど、そうじゃないんじゃないか。そんなことを、脳科学や生物学、哲学、心理学、文学など、さまざまな分野の成果を同じ俎上に載せて、脳や意識を身体に還元することを試みる。
 あくまで個人的な感想ではあるけれど、その試み自体の重要性は理解できるものの、ここで行われている議論には、正直なところついていけなかった。科学と非科学、あるいは似非科学がごたまぜになって、それらの区別すら判然としない。勢いそこから導かれる結論も怪しげに見えてくる。二人がさまざまな分野の知識を断片的ながらも豊富に持っているのはよくわかる。しかしながらそれらの知識を結びつけるのには失敗しているように思える。科学とは何かについての洞察が足りないのではないか。もちろん彼らのいうように、科学では説明できないことが世の中には山ほどあふれているということには同意するのだが。
 少なくとも私には、本書が共感のレッスンをしてくれているようには思えなかったし、超情報化社会の生き方も教えてくれているようには感じなかった。申し訳ないけれど。

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