2018年8月23日木曜日

『知ることより考えること』池田 晶子

 新潮社。
 著者は難しい言葉でなく日常的な言葉で哲学を語る「哲学エッセイ」を確立したなどと言われている。本書では、知ることを否定しているわけではないけれど、本当のことを知るためには考えなくちゃいけない。今はただの知識あるいは情報の取得ばかり一生懸命になって、そのあとの考えるということがおろそかになっている、というのが彼女の基本スタイルである。
 ただ、どうなんだろう。確かに彼女はよく考えている。知識の収集というよりも前に考えることを大事にしている。人生で大事なことは何か。そもそも人生とは何か。そして彼女なりの答えを持っている。時事ネタに関しても多くの考えを述べているが、痛快なまでに意見あるいは判断を下している(切り捨てていると言っていいかもしれない)。読む人によっては目から鱗で気分もいいだろう。
 しかしながら、彼女には社会性というものが欠落しているような気がする。自分をとおした人間のあり方についてはよく考えられているが、社会の仕組みや人間が外部世界とどのようにつながっているのかについて、あまりに無頓着な印象を受ける。上で時事ネタについても多く語っていると述べたが、肝心のその時事ネタに関する知識がまるでないので、とんちんかんな独りよがりのつぶやきに終わっているものも多いように感じた。
 共感できたり、腑に落ちたりする部分は確かにある。だが、そういった部分とそうでない部分の落差が激しく、この本を読むときにはきちんと自分の頭で考えることがとても重要になってくる。実に逆説的な話だが。

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