2018年12月5日水曜日

『有元利夫 絵を描く楽しさ』有元利夫、有元容子、山崎省三

 とんぼの本(新潮社)。
 中世のフレスコ画のようなマチエールと雰囲気を持った絵画を描いた有元利夫。彼は40歳になる前に病気で早世してしまったのだけれど、そんな彼を惜しむかのように本書は編まれている。なにしろカラー図版がとても多い。有元利夫の入門書といっていいくらいだ。そこに生前の有元自身や、妻の容子から見る有元利夫が語り尽くされている(山崎の文章はそんなに多くはない)。子供の頃から芸大時代、そしてサラリーマンを経て画家の道を辿る彼の人生が、ここにはある。その間、絵とどのように向き合ってきたのか。何を考えて生きてきたのか。それらが、飾り気のない素直な言葉で語られている。
 彼は油絵具じゃなくて岩絵具を使っていた。日本画というか仏画の影響があるらしい。でもマチエールはフレスコ画である。しかも本当に何百年も前に描いて年を経たかのような歴史を感じさせる。彼の作品の多くは、無表情で首と腕が太くて不格好な人物が不思議なシチュエーションの中に置かれていたりする。デッサンが狂ってると思う人もいるかもしれないけれど、そうじゃない。あのピカソだって、本当はデッサンの達人だったろう。
 なんともいえない捉えがたい雰囲気のこれらの作品を観ていると、まるで自分が現代でもなく中世でもない時代を超えた空間に身を置いているかのように感じる。そんなふうにこの幻想的な世界に浸っていると、ふいに自分が「絵を観る楽しさ」を味わっていることに気づく。そしてこのことは、有元利夫の「絵を描く楽しさ」に容易に反転する。
 有元ファンといわずとも、この「絵を描く楽しさ」を本書を読むことで味わってみてはいかがだろうか。

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