2019年6月23日日曜日

「有象無象百楽繪Vol.6 夏」のご案内

 針槐の会グループ展「有象無象百楽繪Vol.6 夏」に参加します。出品者は9名ですが、みんな好き勝手に描いているので、水彩からパステル、アクリル、色鉛筆や切り絵まで、バラエティに富んだ賑やかな展覧会になると思います。運がよければ物販していることもあるので、お暇でしたら覗いてみてください。

2019/7/9(火)-7/14(日) 10:00-19:00(最終日18:00)

針槐の会ホームページ

『大通美術館』札幌市中央区大通西5丁目11大五ビル

『スタバにて(スケッチ)』詩月あき

 スタバでスケッチ。
 屋外だったので額が飾ってあるはずもなく、スタバに花瓶が置いてあるわけもなく。見たとおりに描く必要のないところが、絵の好きなところだったりします。

2019年6月22日土曜日

『Velvet Vault』Karen Souza

 2017年。カレン・ソウサ。
 ジャズヴォーカル・アルバムだけれど、ちょっとポップス寄りの曲もあり、全体的に聴きやすい。ピアノ、ドラムス、ベース、ギターというのが基本の構成で、曲によってトランペットやトロンボーン、シンセサイザーなどもサポートに入っている。彼女自身の曲もあるが、多くはスタンダードやポップスのカヴァーだ。もともと彼女の声はそんなに派手なわけではないので、全体として落ち着いた感じの印象になっている。例えば『Walk On the Wild Side』(Lou Reed)みたいなアップテンポの曲もあるんだけど、それでもやっぱり底抜けて明るいという感じはしない。アルバムの中ほどにある『You Got That Something』は、TOKUとのデュエットであり、この二人のかけ合いがとても素敵で、本盤のいいアクセントになっている。ちなみにTOKUはフリューゲル・ホーンも担当していて、日本の男性アーティストである。
 バランスがよくて飽きが来ないので、愛聴盤になりそうな予感。

『図解 世界5大宗教全史』中村 圭志

 ディスカヴァー・トゥエンティワン。
 タイトルでいう「5大宗教」とは、仏教、ヒンドゥー教、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教のことであり、それぞれについて章を立てて解説している。さらにゾロアスター教、ジャイナ教、シク教、儒教、道教、神道などにも触れられており、世界の主要な宗教はかなり網羅されている。
 それぞれの解説内容は、歴史、教典(経典)、思想の概要、地理的人種的広がり、他の宗教との関係など、わりと第三者的で中立的な視点で書かれている。どれか特定の宗教に肩入れしているという印象は受けない。ただし最終章において、著者の宗教に対する考え方が若干述べられており、著者の立場を多少は垣間見ることができる。
 淡々と書かれているせいか不思議と宗教的な雰囲気がなく、宗教書というよりは事典という趣が強い。適度な詳細さも持ち合わせており(500頁近くもあるので)、あとから基本事項を確認するのに役立ちそうだ。
 個人的に興味深かった点を挙げるとしたら、次のふたつである。ひとつは、イスラム教は本来好戦的な宗教ではないということ。そしてもうひとつは、一神教、多神教と分類されることの多い宗教であるが、実際にはどの宗教も一神教的、多神教的な両面を持ち合わせているということだった。ただしタイトルに関していえば、「図解」と銘打っているわりには図の必要性があまり感じなかった感は否めない。
 世界の宗教史を俯瞰的に見ることのできる本としては、よくまとまった本である。

2019年6月12日水曜日

『老荘思想がよくわかる本』金谷 治

 新人物文庫。副題「あるがままの生き方のススメ」。
 『老子』と『荘子』のふたつの書物を底本とし、老荘思想を読み解いている。どちらも人物の名前としても用いられるが、彼らが本当は誰のことを指すのか、あるいは実在する人物なのかどうかについては、学説が分かれるらしい。本書では、あくまで書物としての『老子』、『荘子』を読むことに徹する。これらの思想の対立軸としてよく比較される儒教との関連などについても詳しい。
 原文(本書では書き下し文となっている)から直接解釈を試みている点で、かなり学術的な内容になっている。昔の中国の文献は、音が同じであれば違う漢字を当てはめてみたりと、なかなか意味をとるのが難しいようで、研究者によっても異なる見解の部分が多いらしい。そのあたりの事情についても丁寧に議論しており、著者の真面目さが伝わってくる。ただし、そのような真面目さが逆に回りくどさにもつながっていることは確かで、副題の「あるがままの生き方のススメ」につられて、軽いノリで本書を手に取ってしまうと、痛い目に遭う。これは自己啓発書のようなハウツー本とは一線を画しており、かなり本格的な本なのだ。
 老荘思想というと、無為自然だとか桃源郷だとか胡蝶の夢だとか断片的な単語は出てくるものの、個人的にはあまり統一されたイメージは持てていなかった。だから老子と荘子の違いも考えたことなどなかったのだけれど、本書ではこれらの違いはかなり明確に描き出されているように感じる。これまで、孔子の儒教思想より、道教的な老子の方が自分に合っているなあくらいに、なんとなく思っていただけだったのだけれど、本書を読むことで、実は私は老子の考え方よりも荘子の思想にとても共感を覚えてしまうのだな、と新たな発見をした。

2019年6月8日土曜日

『Secret Book』Fabrizio Paterlini

 2017年。ファブリツィオ・パテルリーニ。
 彼はイタリアのピアニストで、ソロピアノ曲をリリースしたりもしている人だけれど、本作はストリングスやドラム(打ち込み?)も入って、少しだけ賑やかになっている。とはいえ彼本人が述べているように、叫ぶんじゃなくてささやくようにピアノを弾くことによって、全体のアンサンブルをバランスよく仕上げることを目指しているようだ。ビートが特に目立つこともなく、なんとなくアンビエントな空気を感じさせながらも、しっかりとした芯のある音楽性を感じさせる。シンセサイザーも多用し、全体的にエレクトリカルな雰囲気が強く漂う。
 このアルバムでひとつだけ不満を挙げるとすれば、アルバム最後に配置された19分14秒もの曲『Leave』の中に数分以上にわたる無音部分があって、しばらくして突然スピーカーから音が出てきてびっくりしてしまうことくらいかな。

2019年6月5日水曜日

『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』加藤 陽子

 新潮文庫。
 タイトルだけを見ると第二次世界大戦のことなのかな、と思ってしまいそうだけど(私だけ?)、扱っているのは、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、満州事変と日中戦争、太平洋戦争であり、日本が当事者となった19世紀末から20世紀中盤までのほぼ半世紀にわたる「戦争」を対象としている。本書は、これらの戦争について著者が高校生を相手に行った5日間の講義を文字に起こしたものだ。
 日本国内の政治家や軍人などの思想だけにとどまらず、ヨーロッパ諸国やアメリカ、ロシア(ソ連)、中国や朝鮮といった国々の思惑をも取り込みながら、日本が戦争に向かっていった経緯を生徒との対話を通じて語っている。ときに地図などの図表も使い、地政学的な観点からもわかりやすいように解説する。
 戦争が悪だとか善だとか、あるいは日本人が悪だとか善だとか、そういう視点とは一線を画した歴史的事実を追う姿が感じられる。私たちが中学、高校で習ってきたような、ただ年表と事件だけを覚えさせられたのとは違う、もっとずっとたくさんのかけひきや思い、偶然と必然の混交によって歴史は作られてきたのだな、と目から鱗が落ちた。この本は結構な分量のある文庫だけれど、それでもここには書ききれなかった多くの人たちの、星の数ほどの思想が裏には隠れているんだということを、十分に読者に想像させてくれる一冊だと思う。逆に言えば、この本に書かれていることは、これはこれで事実を丁寧に集めたものだけれど、ここでは拾いきれなかった事実もまたたくさんあるんだから、みんなもっと歴史に興味を持って勉強して、深い理解につなげていってね、という温かくも強いメッセージを感じる。おそらくこの本は、日本人が戦争をせざるを得なかった理由について生徒に解説しているというよりは、歴史を解読する楽しさを生徒に伝えることに主眼を置いているのではないだろうか。

2019年6月1日土曜日

『Folding Space』Spencer Elliott

 2019年。スペンサー・エリオットのソロギター・アルバム。Candyrat Recordsからのリリースとしては3枚目となる。
 彼は元々パンクやオルタナティブのバンドでギターやヴォーカルをやっていた人だが、今はソロギタリストとして活動している。ギターのジャンルとしては、いわゆるニューエイジと言われるヘッジスやドン・ロス、アンディ・マッキーなどの影響が色濃い。ちなみに、このアルバムのエンジニアとプロデューサーを兼ねているアントゥワン・デュフール(Antoine Dufour)も同様の傾向を持つギタリストだ。
 このアルバムは、これらのギタースタイルの忠実な後継者としてのスペンサー・エリオットの音楽性が遺憾なく発揮されているように感じる。パーカッシヴなボディヒットを加えつつの正確無比なフィンガリング、ちょっと影のかかったような落ち着いた音色。曲全体の構成の安定感。なお、盤名の『Folding Space』は、フランク・ハーバート(Frank Herbert)のサイエンス・フィクション『Dune』の中にでてくる言葉から採られたそうで、宇宙旅行的なニュアンスがあるらしい(デヴィッド・リンチが1984年に映画化している)。
 聴いていてとても心地いいので、ものすごく好きなアルバムだ。ただ、あまりにもよくできすぎているといえばいいのか、このジャンルの特徴的な部分を捉えすぎているといえばいいのか、そんなところがちょっとスペンサー・エリオットらしさというのがどこにあるのかわかりづらくさせている部分があって、もっとはじけちゃえばいいのに、と思わないでもない。でもまあそれは聴く側としてのわがままで贅沢なお願いなのかもしれない。この人はもうこれで完成してしまっている感があるので、この先新たな領域に入ったらどんな化け方をするのか、とても楽しみだ。

『どこ行こっか?』詩月あき

Where do you wanna go? (200×200mm)

 クロッキーブックに描いたラクガキですが、思いのほかかわいくできたので、色をつけてみました。鉛筆のスケッチに軽く色鉛筆で色を乗せて、スマホで撮影したあとさらに加工しています。
 デッサンが狂っているのは、ラクガキということでご勘弁を。実物を見ないで描いているので。

2019年5月26日日曜日

『美女と歩いているのは誰?』(手直し)詩月あき

 Who is walking with the Beauty? (224×182mm)。
 
 以前この絵はブログでアップしているのですが(2019/3/31の記事)、構図的にどうしてもバランスが悪い気がして、少し描き直しました。少しはましになったかなと自分では思っているのですが、どうでしょうか。
 アクリルとクレパス(オイルパステル)です。

2019年5月25日土曜日

『Encounter』押尾コータロー

 2019年。個人名義としては2年ぶりのアルバム。
 全体をとおして、押尾コータローらしさがよくでているアルバムだなと思う。1曲目からして、初めて聴いても誰の曲かすぐにわかってしまう。前半は彼のトレードマークともいえる、ストロークを弾きながら同時にメロディも奏でるアップテンポな曲を配置して、後半は指弾きの渋めの曲を多めにしながらも、ときに激しく起伏をつけてくれる感じ。彼はヘッジス・フォロワーと呼ばれていたりするけれども、日本的でポップ寄りのメロディを前面に据えている点で、海外のヘッジス・フォロワーとは一線を画している。
 ストローク系の曲では『Cyborg』がすごくかっこよくて、出色のできなんじゃないだろうか。『Flower』なんかも6/8拍子のリズムが楽しくていい感じ。指弾きでは、『ガール・フレンド』とか『夕凪』が、とても味があっていい。
 お、これは、と思ったのは、『久音 -KUON- feat. 梁 邦彦 〜ジョンソンアリラン変奏曲〜』 。平昌オリンピック応援ソングとして開会式の音楽監督を務めた音楽家・梁邦彦との出会いで実現したピアノとのコラボレーション。私はアリラン自体はよく知らないのだけれど、この曲は聴かせてくれる。曲としての仕上がりが最高だと思う。
 他にも、クラシックギタリストの朴葵姫(パク・キュヒ)のために書いた『Harmonia』、ギタリストの石田長生が押尾のために書いた、泣きのギター・インスト『Pushing Tail』、ウィリアム・アッカーマン(William Ackerman)とセッションした『ナユタ』(この曲は2010年のアルバム『Hand To Hand』が初出だと思う)など、聴きどころが満載だ。
 彼のギター演奏の幅の広さを余すところなくカバーしたアルバムとなっているので、初めて押尾コータローを聴く人にとって、最初の一枚としてとてもいいんじゃないかと思う(もう15枚以上アルバムをリリースしてますが)。

2019年5月19日日曜日

『オランダ、ビネンホフにて』詩月あき

 At Het Binnenhof in The Hague, The Netherlands. F4(333×242mm)の透明水彩。

 ずっと前からいつか描こうと思っていた景色を、ようやく形にすることができました。苦戦するのがわかっていたため、先延ばしにしていました。
 オランダのデン・ハーグにあるビネンホフ(国会議事堂)の前の広場です。ここに行ったとき、実はすぐ近くにあるマウリッツハイス美術館に行きたかったのですが、運悪く閉館中でした。フェルメールの作品を展示していることで有名なんですよね。ちなみにフェルメールが住んでいたデルフトは、デン・ハーグの隣町です。

2019年5月17日金曜日

『Thread of Creation』Calum Graham

 2019年。カラム・グレアムの6枚目のアルバム。基本的にはソロギター。
 カナダ出身で、たぶんデビューから10年くらい経っているけれど、まだ20代。デビュー当時は荒削りながら魅力的なギターを弾く人だな、くらいにしか思っていなかったけれど、このアルバムはもう十分年季が入っていて、ものすごい安定感。うますぎる。マイケル・マンリング(たぶんベース。Michael Manring)とコラボしている「In Lak'Ech」なんかを聴くと、ウィンダムヒル系の雰囲気を強く感じる(本盤のレーベルはCandyrat Recordだけど)。アントゥワン・デュフール(Antoine Dufour)と一緒に弾いている『Absolution』はもちろんダブルギターだが、カラム・グレアムひとりで弾いているはずの他の曲も、複数のギターを使っているように聞こえてしまうのが信じられない。もしかしたらオーバーダブをしているのもあるのかもしれないけれど、たぶんほとんどは一度に弾いているはず。
 いやあ、このアルバムはいいなあ。Amazonではアルバムを置いていないみたいなので、ジャケ写のほかに彼のホームページアドレスを書いておきます。私はここからFLACバージョンをダウンロードしました。

Calum Graham Homepage

2019年5月15日水曜日

『時間とはなんだろう』松浦 壮

 講談社ブルーバックス。副題「最新物理学で探る「時」の正体」。
 タイムマシンに乗って未来や過去に行ったり、はたまた時間を止めてみたりと、ファンタジーの世界でも「時間」はときに重要な役回りを演じている。でも実際に「時間」は何かと考えると、時計とどう違うのかだとかいろいろとわからないことがたくさんある。
 この本はそれらの質問に対して直接の答えを与えてくれているわけではないが、最新物理学の観点からみた「時間」の概念を、やさしく丁寧に、難解な数式などは使わずに教えてくれる。
 そこで肝となるのが、「時間」と「運動」の関係である。著者はそこから話を始めて、ガリレオやニュートンの運動法則、アインシュタインによる特殊相対性理論、一般相対性理論、マクスウェルの電磁波の存在予想、量子論、弦理論(ひも理論)と、過去から現代に向かって「時間」の概念がどのように変遷、発達してきたのかをわかりやすく解説している。
 いや、どうだろう。わかりやすくはないかもしれない。個人的な読後感で申し訳ないが、次のような感想を持った。読み進めていると、ものすごく速い宇宙船に乗っている人は地上の人よりも時間がゆっくり動くという相対性理論の話くらいまでは具体例を想像しやすいが、量子論が絡んでくる頃から抽象的な議論が多くなって、理解は難しくなる。最後の方になると、「時空」の話はしているんだけれど、今までふつうに「時間」と呼んでいたものが、実は「時間」ではなかったんじゃないかみたいな、変に哲学的な思考に陥りそうな自分に気づき、狐につままれたような気分にもなる。
 ちょっと残念なことに、「時間」とは何か、明確な答えはもうちょっと先の未来にならないとわからないみたいな締めくくりになっている。でも現在の科学ではここまで「時間」の正体に迫れているんだよ、というアピールはよく伝わってくる。全体としては、「時間」の話というよりは「物理」の本として、とてもよくできた入門書なのではないだろうか。「時間」をネタにして物理学の歴史を解説しているのだと思う。そうやって考えると、これ以上簡単に物理学の歴史を振り返るのは逆に難しい気もするので、一般の人が理解できるかできないかのギリギリのところを攻めているという点で、絶妙なサイエンス本になっている。「物理」はよくわからないと苦手意識を持っている人なんかに、実はオススメなのかもしれない。

2019年5月11日土曜日

『Begin Again』Norah Jones

 2019年。ノラ・ジョーンズ。『Day Breaks』以来2年半ぶりのニュー・アルバム。
 レーベルの説明によると、「何のプレッシャーもジャンルの境界線も持たずに、ただクリエイティヴな道に没頭して曲を作り上げる」というコンセプトのもとにできた曲を集めたアルバムだという。彼女の頭に自由に浮かんできたイメージをそのまま曲にしたってことらしい。7曲入りで30分ちょっとと、最近の音楽アルバムとしては短い。これくらいのボリュームだとミニアルバムとして出しているアーティストもいるくらいだから。ただ、CDが出てくる前、レコードだけの時代はこれくらいのフルアルバムもわりとあったよな、と思う。
 自由につくったせいなのか、最初の曲『My Heart Is Full』からしておどろおどろしい雰囲気が漂ってくる。受け手にこびを売っている感じはない。でも他の曲は、今までに彼女がリリースしてきた曲のどれかにはちょっと似た雰囲気を持っている。それはソウルだったりカントリーだったりジャズだったりと、アルバム全体として統一感を持たせようとした感じはまったくないのだけれど、やっぱりこれはノラ・ジョーンズのアルバムなんだな、ということは強く感じる。
 実はこのアルバムのアマゾンのレビューは驚くくらいに手厳しい。全然いい曲がなくて捨て歌ばかりだみたいな。でも私は結構このアルバムを気に入っている。正直なところどこが悪いのかよくわからない。これは私がノラ・ジョーンズ教に入信してしまったという証なのだろうか。

2019年5月9日木曜日

『絵本の冒険』小野明、五味太郎他

 フィルムアート社。副題「「絵」と「ことば」で楽しむ」。
 対談、短い評論、エッセイ、コラムなどによって綴る絵本についての本。絵本とは何かについて語ったり、絵本にはどんな種類があるか解説してみたり、ときには一緒に絵本を読んでみたり。たくさんの切り口から、総勢20名近くに及ぶ絵本関係者の言葉から、「絵本」の輪郭があぶり出されてくる。絵本関係者って誰?ってことだけど、それは絵本専門の作家さんや編集者だけでなく、デザイナー、歌人、料理家、音楽家、研究者などジャンルは実にさまざま。でもみんな絵本と関わっている。こんなに参加者が多いとまとまらないんじゃないかと心配になりそうだけど、心配は無用。この本全体でひとつの作品、いわば交響曲みたいにがっちりと唯一無二の世界をつくっている。その根幹にあるテーマはもちろん「絵本」。表現方法や歴史みたいな堅い話から、収入やデビューのことのような俗っぽい話までいろいろなのに、ブレがない。私が一番おもしろかったのは五味太郎と荒井良二の対談だったりするわけだけれど、それ以外の、他の人が書いた文章、インタビューなども本当におもしろい。
 絵本を読む人はもちろんのこと、絵本をつくりたい人、つくっている人でも十分以上に楽しめる本であること請け合い。

2019年5月4日土曜日

『MY SONG』Keith Jarrett

 1978年(1977年録音)。キース・ジャレット(p, per)、ヤン・ガルバレク(ts, ss, Jan Garbarek)、パレ・ダニエルソン(b, Palle Danielsson)、ヨン・クリステンセン(ds, Jon Christensen)。投稿名としては「Keith Jarrett」としたけれど、「キース・ジャレット・カルテット」とした方がよかったのかもしれない。この4人は通称として、ヨーロピアン・カルテットとかスカンジナヴィアン・カルテットと呼ばれているらしいから(アメリカン・カルテットと区別するための名称なのだろうか)。
 キースのピアノもさることながら、ガルバレクのソプラノサックス、テナーサックスが実にいい。歌うように自由自在に奏でているようで、4人の息がぴったりと合っている。中でも「My Song」はとてもきれいなバラードで、人気があるのがよくわかる。「My Song」と同じ傾向でメロディアスなのは、他に「Country」、「The Journey Home」があるけれど、私は後者の「The Journey Home」が気に入った。あと、意外に好きなのが「Questar」。いかにもジャズって感じがする。このアルバムを聞き流していると、えっ?と思うような異質な曲がひとつある。つい耳をそばだててしまうその曲が「Mandala」だ。メロディアスとはほど遠い、前衛的な激しさを感じる。でももしかしたらこの曲にこそキースっぽさが表れているのかな、とも思う。
 適度に起伏に富んで、なかなか楽しくて親しみしやすいアルバムだと思う。

2019年5月3日金曜日

『CLIP STUDIO PAINTブラシ素材集』ゾウノセ、角丸つぶら

 ホビージャパン。副題「雲から街並み、質感まで」。
 タイトルのとおり、Clip Studio Paintというお絵かきソフトで使うブラシ素材集。著者の作った151種類ものブラシがCD-ROMに収められており、それぞれについて丁寧な解説が掲載されている。雲、樹木、炎のような自然物ブラシから、レンガ、電柱、街並みといった人工物ブラシ、模様とか髪のツヤなどの効果ブラシと、分野は多岐にわたる。
 すごい。プロはこういうのを自分で作って、時間の節約にしているのか。しかもかなり本格的で即実用に耐えうる。もちろんブラシで描いただけではただのべた塗りでしかないけれど、それをどうやって加工していけばよいのかまで参考例を教えてくれているので、イラストを描く勉強にもなる。レイヤーの扱いや重ね方など、初めは慣れないと簡単には描けなさそうだけれど、一度しっかりと手順を覚えれば、手際よく描き進めていくことができそうだ。
 なお、ここに収められているブラシは、すべて商用、私用を問わず利用可能だということで、それもうれしい。

2019年5月1日水曜日

『ケインズとハイエク』松原 隆一郎

 講談社現代新書。副題「貨幣と市場への問い」。
 マルクスが亡くなった年に生まれたケインズと、その16年後に生まれたハイエク。ふたつの世界大戦と世界恐慌を共に経験した二人の経済学者の思想を追う。
 何かと比較され、現代まで大きな影響を及ぼしている彼らは、対立した学説を唱えているとよく言われる。しかし実際のところは、ときに反目しながらも、尊敬し合う仲でもあったらしい。同じ問題意識から出発してもまったく違うアプローチをとり、まったく違う結論に至るというところは実におもしろい。
 現実の問題に対処するための方策をマクロ的に考え、時代時代で対応方法を替えていったケインズと、もっと経済をミクロな複雑系ともいえる観点から眺め、遠くを見つめていたハイエク。私にはそういう風に二人が見えたのだが、その理解は合っているのだろうか?と言うのも、この本は新書とは思えないくらい容赦なく専門用語を並べ立てているので、よくわからなかったところが多かったからだ。どこがケインズのことでどこがハイエクのことか、注意深く読み進めていかないと、途中でしばしば路に迷う。
 内容がかなり専門的なので、経済学をさらっとでも学んだ人向けなのだと思う。経済学を学んだことのない読者がこの本に挑むとしたら、その前にケインズかハイエクどちらかひとりの思想をきちんと頭にたたき込んだ上で本書を読むと、二人の思考の違いがよくわかることだろう。個人的にはハイエクの考え方はなんだか発散の方向に向かっているような気がするので、ケインズのアプローチの方が好みだけれど、ハイエクの方が現代的思考に近いのだろうな、という印象を持った。

2019年4月29日月曜日

ホームページデザインに動きをつけてみた

 詩月あきのホームページ『あきの雫』(リンク)は今まで固定画像の表示だけで寂しかったので、ちょっとアニメーションで動きをつけてみました。なかなか自分の思っているとおりには実現できなくて、デザイン的に妥協した部分はかなりあります。コーディングのスキル不足を痛いほど感じました。
 また、FirefoxとChromeでは意図したとおりに動くのですが、Edgeでは背景のアニメが動かず、逆にSafariでは背景のアニメが動きすぎたりと、うまくいけてません。Internet Explorerに至ってはメインの画像がゆがんでしまっています。これ以上は私には無理だと判断し、そこで断念しました。
 というわけで、FirefoxかChromeの最新版での閲覧推奨です。わがままですいません。

『PICK POP!』DEPAPEKO

 2018年。ギターデュオであるDEPAPEPE(徳岡慶也、三浦拓也)と、押尾コータローの3人がタッグを組んで作り上げたジャパニーズポップ・カヴァーアルバム。
 『チョコレイト・ディスコ』(Perfume)、『恋』(星野源)、『Gee』(少女時代)と、ノリのいいヒット曲が並ぶ。
 もう完璧ですね。リズムといい、伴奏とメロディのバランスといい、ぴったりと息の合った掛け合いがたまらない。アレンジも技術も申し分ないし、ピック弾きのDEPAPEPEの音と、ボディヒッティングなどのパーカッシヴな押尾の音が、まさにひとつになっている。曲目リストに『夢芝居』(梅沢富美男)があって、「?」な感じで聴いてみたけれど、AKB48とか小田和正らの中にあっても全然違和感のない素敵なアレンジに仕上がっている。どのカヴァーもいいけれど、『Dragon Night』(SEKAI NO OWARI)で魅せるナチュラルなギターの音がぐっとくる。
 ジャパニーズポップの他にも、DEPAPEPEの『START』、押尾コータローの『翼~you are the HERO~』などのセルフカヴァーと、DEPAPEKOによる『For You』も収録されており、彼ららしさも存分に楽しめる。
 これは是非、ふだんギター・インストを聴かない若い人たちにも手に取ってもらって、ギター・インストの世界を味わってほしい。お薦めアルバム。

2019年4月20日土曜日

『Stolen』Lotte Kestner

 2011年。ロッテ・ケストナーは、アメリカのシンガーソングライター、アンナ・リン・ウィリアムズ(Anna-Lynne Williams)のソロプロジェクト。2012年に解散したトレスパッサーズ・ウィリアム(Trespassers William)のヴォーカル、ギターを担当していた。
 このアルバムはたぶん彼女名義のセカンドアルバムにあたる。ロッテ・ケストナーは日本では『Covers』(2017年私の記事)というカヴァーアルバムがわりとヒットしたと思うのだけれど、本作もカヴァーアルバムだ。といっても私はこの中の曲は何ひとつ知らない。他の人の感想などを見てみると、原曲とはかなり変えて歌っているらしい。バックはギターやピアノ、シンセなどを使った弾き語りのような感じで、とてもシンプルな編曲になっている。逆にそのシンプルさのせいで、彼女独得の一見か細いながらも芯のあるささやくような歌声が際立って聞こえる。私はこの歌声にすっかり魅了されてしまったのです。
 この中の曲では、「Wait For Me」、「That Look You Give That Guy」、「Earlies」、「True Faith」などが好きですね。

2019年4月18日木曜日

『紫のアルストロメリア』詩月あき

 ボタニカルアート風の透明水彩画です。こういう類いの写実画はめったに描かないので、ある意味貴重かもしれません。たまにしか描かない理由は、単に描いている途中が全然楽しくないというただそれだけです。見たままに再現するためにひたすら筆を動かすという作業は、私にとっては機械的で単調すぎて、苦痛ですらある。完成された作品が嫌いなわけではないんです。ただ描く作業が嫌だということです。だから、超写実主義の絵は、自分では描かないで、他の人が描いてくれたのを観て楽しんでます。観る分には、すごいなあ、と楽しく時間を過ごすことができるので。

2019年4月16日火曜日

『本当にわかる心理学』植木 理恵

 日本実業出版社。
 心理学といえば、フロイト、ユング、アドラーなどを思い浮かべる人が多いだろう。しかし彼らのアプローチは「深層心理学」といって、科学的なものではなかったのだという。それに対して現在の心理学研究の中心になっている「実験心理学」は科学的アプローチをとっていて、本書はこの科学的な心理学の成果を読者に知ってもらうことを目的としている。
 この本の章の立て方はちょっと変わっていて、心理学の手法別に分類されている。こんな感じだ。「現象から見える心理学」「実験で測る心理学」「観察で見抜く心理学」「理論を整理する心理学」「技法を提示する心理学」。これだけを見るとなんだか難しそうに感じるかもしれないけれど、実際に書かれていることは、「美男美女であることは本当に得か?」「人をやる気にさせるにはどうすればよいのか?」「偽りの記憶が生まれるのはどういうときか?」のように、ふだん私たちが生きていて、ふっと頭をよぎるような素朴な疑問について、上記の分類に振り分けただけなので、そう難しいわけではない。
 本書のいいところは、きちんとしたデータに基づいた科学的な心理学の成果を取り上げているという点にある。想像とか思いだけで出来上がった心理学とは一線を画しているのがいい。
 ただ、最後の「技法を提示する心理学」だけは、必ずしも科学的とは言えないのではないかと感じた。この章は心療内科やカウンセリングにおける臨床の場で用いられる方法論を解説しているのだけれど、心理療法というのはまだまだ経験に頼るところが多いのかなという印象を持った。
 とはいえ、全体としては現代の心理学全般をバランスよく俯瞰した、きちんとしていて信頼のおける本であることはおそらく間違いはない。

2019年4月13日土曜日

『How Sweet It Is』Joan Osborne

 2002年。ジョーン・オズボーンによるフルカヴァーアルバム。
 無知をさらすことになるだけれど、このアルバムはカヴァーアルバムだというのに、ここに収録されている曲はひとつも知らなかった。そのせいで、すべての曲がオリジナルのような気がしてしまう。彼女の力強いソウルフルな歌声に乗せられたそれらの楽曲は、生き生きと輝いてみえる。確かに選曲もいいのだと思う。しかしそれだけではない彼女の魅力があふれた作品なのではないかと感じる。
 どちらかというとロック調のノリのいい曲が多い中で、逆に物静かに、しかししっかりと歌い上げた『These Arms Of Mine』(Otis Redding)はとても目立っていて、一歩突き抜けた感じがする。そしてそのすぐあとに続く『Only You Know And I Know』(Dave Mason)への劇的な展開がとても印象的だ。その他の曲では『Think』(Ted White, Aretha Franklin)、『Everybody Is a Star』(Sylvester Stewart)などが気に入った。どの曲も聴き甲斐はあるのだが。
 次はオリジナルを聴いてみたいと強く思う。

2019年4月11日木曜日

『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』佐藤 航陽

  NewsPicks Book(幻冬舎)。
 現代及び未来において、お金はどうなっていくのか、経済はどうなっていくのかについて、著者の考えを綴った本。
 フィンテックを便宜的にFintech1.0とFintech2.0に分け、前者を「すでに存在している金融の概念を崩さずに、ITを使ってその業務を限界まで効率化するようなタイプ」、後者を「近代に作られた金融の枠組み自体を無視して、全くのゼロベースから再構築するタイプ」としている。例えばFintech1.0はAIを使ったロボアドバイザー、スマートフォン決済、クラウドファンディングであり、Fintech2.0はビットコインなどであるという。そして、本書の「お金2.0」とは、もちろんこのFintech2.0から来ている。
 今までは国が発行する「お金」つまり貨幣を中心にした資本主義が主流だったけれど、これからは「お金2.0」などに代表される価値主義に移行、あるいは価値主義と併存していくんじゃないかという著者の指摘はなかなかにおもしろい。「お金2.0」というとちょっと誤解が出そうなので補足すると、価値主義は仮想通貨みたいなものばかりを指すのではなく、今まで「お金」では表現できなかった、データの蓄積度だとか信用だとかYouTubeなどでのおもしろさだとか、さまざまな「価値」全般を指している。
 さらにおもしろいなと感じたのは、この価値主義経済というのは誰でも勝手に作ることができて、そんないろんな経済(資本主義経済だけではないということ)がたくさん並立した社会がやってくるんじゃないかということだ。「お金」で社会が回るんじゃなくて、「価値」で社会が回る。みんなは「お金」だけにとらわれることなく、自由にいろんな経済を組み合わせて利用すればいい。お金儲けだけがあがめられる時代は終わり、お金がなくても(というかお金のことを考えなくても)生きていくことができる時代が来ると。
 ベーシックインカム、巨大企業による生活インフラの無償化、トークンエコノミーなどにより、「人間はお金や労働から解放され」ると予測する著者の考えはあまりに現実を無視した夢物語ではないのか、とする向きも当然あるだろう。しかし半世紀前にはこんなに当たり前のように皆がスマホを持ち歩く時代など考えられなかっただろうから、著者の指摘を荒唐無稽な話だと捨象するのはちょっと保守的すぎると思う。未来予想図のひとつとして十分耳を傾ける価値はあるだろう。

2019年4月6日土曜日

『Simply Love』Halie Loren

 2013年。ヘイリー・ロレン。ジャズヴォーカル・アルバム。
 歌い方がとても自由だなと思う。しっかり声を出しているところと力を抜いているところのバランスが絶妙。時折ちらっと聞こえるファルセットの入れ方などはあまり他の歌手にはみられないので、そういったところは好みが分かれるかもしれない。
 アップテンポのものからバラードまで幅広く揃えていて、ストリングスやウクレレ、ギターなども使っているけれど、全体的にMatt Trederの弾くピアノとのコラボが印象に残る。彼女の作っている曲は「Cuando Bailamos」、「Bare Feet」、「Simply Love」の3曲で、個人的に好きなのは、しっとりと歌い上げた「Simply Love」だ。
 他の収録曲も有名なものが多く、「For Sentimental Reasons」、「L-O-V-E」、「My Funny Valentine」、「Moon River」などがラインナップとして取り上げられている。彼女の声が好きなら、安定感に富んだアルバムと言えると思う。

『ひまわりを君に』詩月あき

“Sunflowers To You” (F4, 242×333mm)

 透明水彩です。私の水彩は薄いとよく言われるので、濃いめに仕上げてみました。慣れないせいか、重ね塗りのしすぎでちょっと重々しい感じになってしまいました。
 春はお別れの季節です。そんなときに目にしたひまわりの花束を元に描いたので、明るい感じにはできなかったのかもしれません。

2019年4月3日水曜日

『FACTFULNESS』ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド

 日経BP社。上杉周作、関美和 訳。副題「10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」。
 世界はどんどん悪くなっている。格差がどんどん広がっている。そう信じる人は多いけれど、本当だろうか。著者はノーベル賞受賞者などの専門家を含む世界中の多くの人にいくつもの選択問題に答えてもらった。しかしその結果は、適当に答えたよりもずっと低い、つまりサル以下の正答率しか得られなかったのだという。例えばその質問とは、「世界の1歳児で、なんらかの予防接種を受けている子供はどのくらいいる?」、「いくらかでも電気が使える人は、世界にどのくらいいる?」といったものだ。答えの多くは、より悲観的な見方をしていたというのだ。
 それではいけない。事実に基づいた世界の見方をきちんとしていこうじゃないか、というのが本書の主旨であり、それが著者のいう「ファクトフルネス」という言葉である。事実を正しく捉えられない原因として、著者は10の思い込み(本能)を挙げ、その思い込みに縛られずにデータを基に世界を正しく見ることができるようにするためにはどうすればよいか、読者をファクトフルネスの世界に導く。
 分断本能、パターン化本能、犯人捜し本能など、確かにそういったステレオタイプなものの見方は改めた方がいいことは強く感じる。ニュースや口コミに惑わされないように、いかにそれらに批判的に向き合えるか。また、そうやって向き合っている自分自身にもいかに批判的になれるか。この本は、より多くの人が事実に基づいた世界の見方ができるようになるための、大きなヒントを与えてくれる。
 ただし私はこうも感じる。確かに本書は正しい事実を見つめる方法を教えてくれる。しかし、その事実と向き合ったあとにどういう結論を導き出すかについては読者に委ねられている。見方を変えると、著者がファクトフルネスを基に私たちに提示したメッセージそれ自体にも間違いがあるかもしれない。つまり、この本そのものに対しても、私たちは批判的になるべきであり、著者はそれを求めているのではないかと。