2019年6月23日日曜日

「有象無象百楽繪Vol.6 夏」のご案内

 針槐の会グループ展「有象無象百楽繪Vol.6 夏」に参加します。出品者は9名ですが、みんな好き勝手に描いているので、水彩からパステル、アクリル、色鉛筆や切り絵まで、バラエティに富んだ賑やかな展覧会になると思います。運がよければ物販していることもあるので、お暇でしたら覗いてみてください。

2019/7/9(火)-7/14(日) 10:00-19:00(最終日18:00)

針槐の会ホームページ

『大通美術館』札幌市中央区大通西5丁目11大五ビル

『スタバにて(スケッチ)』詩月あき

 スタバでスケッチ。
 屋外だったので額が飾ってあるはずもなく、スタバに花瓶が置いてあるわけもなく。見たとおりに描く必要のないところが、絵の好きなところだったりします。

2019年6月22日土曜日

『Velvet Vault』Karen Souza

 2017年。カレン・ソウサ。
 ジャズヴォーカル・アルバムだけれど、ちょっとポップス寄りの曲もあり、全体的に聴きやすい。ピアノ、ドラムス、ベース、ギターというのが基本の構成で、曲によってトランペットやトロンボーン、シンセサイザーなどもサポートに入っている。彼女自身の曲もあるが、多くはスタンダードやポップスのカヴァーだ。もともと彼女の声はそんなに派手なわけではないので、全体として落ち着いた感じの印象になっている。例えば『Walk On the Wild Side』(Lou Reed)みたいなアップテンポの曲もあるんだけど、それでもやっぱり底抜けて明るいという感じはしない。アルバムの中ほどにある『You Got That Something』は、TOKUとのデュエットであり、この二人のかけ合いがとても素敵で、本盤のいいアクセントになっている。ちなみにTOKUはフリューゲル・ホーンも担当していて、日本の男性アーティストである。
 バランスがよくて飽きが来ないので、愛聴盤になりそうな予感。

『図解 世界5大宗教全史』中村 圭志

 ディスカヴァー・トゥエンティワン。
 タイトルでいう「5大宗教」とは、仏教、ヒンドゥー教、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教のことであり、それぞれについて章を立てて解説している。さらにゾロアスター教、ジャイナ教、シク教、儒教、道教、神道などにも触れられており、世界の主要な宗教はかなり網羅されている。
 それぞれの解説内容は、歴史、教典(経典)、思想の概要、地理的人種的広がり、他の宗教との関係など、わりと第三者的で中立的な視点で書かれている。どれか特定の宗教に肩入れしているという印象は受けない。ただし最終章において、著者の宗教に対する考え方が若干述べられており、著者の立場を多少は垣間見ることができる。
 淡々と書かれているせいか不思議と宗教的な雰囲気がなく、宗教書というよりは事典という趣が強い。適度な詳細さも持ち合わせており(500頁近くもあるので)、あとから基本事項を確認するのに役立ちそうだ。
 個人的に興味深かった点を挙げるとしたら、次のふたつである。ひとつは、イスラム教は本来好戦的な宗教ではないということ。そしてもうひとつは、一神教、多神教と分類されることの多い宗教であるが、実際にはどの宗教も一神教的、多神教的な両面を持ち合わせているということだった。ただしタイトルに関していえば、「図解」と銘打っているわりには図の必要性があまり感じなかった感は否めない。
 世界の宗教史を俯瞰的に見ることのできる本としては、よくまとまった本である。

2019年6月12日水曜日

『老荘思想がよくわかる本』金谷 治

 新人物文庫。副題「あるがままの生き方のススメ」。
 『老子』と『荘子』のふたつの書物を底本とし、老荘思想を読み解いている。どちらも人物の名前としても用いられるが、彼らが本当は誰のことを指すのか、あるいは実在する人物なのかどうかについては、学説が分かれるらしい。本書では、あくまで書物としての『老子』、『荘子』を読むことに徹する。これらの思想の対立軸としてよく比較される儒教との関連などについても詳しい。
 原文(本書では書き下し文となっている)から直接解釈を試みている点で、かなり学術的な内容になっている。昔の中国の文献は、音が同じであれば違う漢字を当てはめてみたりと、なかなか意味をとるのが難しいようで、研究者によっても異なる見解の部分が多いらしい。そのあたりの事情についても丁寧に議論しており、著者の真面目さが伝わってくる。ただし、そのような真面目さが逆に回りくどさにもつながっていることは確かで、副題の「あるがままの生き方のススメ」につられて、軽いノリで本書を手に取ってしまうと、痛い目に遭う。これは自己啓発書のようなハウツー本とは一線を画しており、かなり本格的な本なのだ。
 老荘思想というと、無為自然だとか桃源郷だとか胡蝶の夢だとか断片的な単語は出てくるものの、個人的にはあまり統一されたイメージは持てていなかった。だから老子と荘子の違いも考えたことなどなかったのだけれど、本書ではこれらの違いはかなり明確に描き出されているように感じる。これまで、孔子の儒教思想より、道教的な老子の方が自分に合っているなあくらいに、なんとなく思っていただけだったのだけれど、本書を読むことで、実は私は老子の考え方よりも荘子の思想にとても共感を覚えてしまうのだな、と新たな発見をした。

2019年6月8日土曜日

『Secret Book』Fabrizio Paterlini

 2017年。ファブリツィオ・パテルリーニ。
 彼はイタリアのピアニストで、ソロピアノ曲をリリースしたりもしている人だけれど、本作はストリングスやドラム(打ち込み?)も入って、少しだけ賑やかになっている。とはいえ彼本人が述べているように、叫ぶんじゃなくてささやくようにピアノを弾くことによって、全体のアンサンブルをバランスよく仕上げることを目指しているようだ。ビートが特に目立つこともなく、なんとなくアンビエントな空気を感じさせながらも、しっかりとした芯のある音楽性を感じさせる。シンセサイザーも多用し、全体的にエレクトリカルな雰囲気が強く漂う。
 このアルバムでひとつだけ不満を挙げるとすれば、アルバム最後に配置された19分14秒もの曲『Leave』の中に数分以上にわたる無音部分があって、しばらくして突然スピーカーから音が出てきてびっくりしてしまうことくらいかな。

2019年6月5日水曜日

『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』加藤 陽子

 新潮文庫。
 タイトルだけを見ると第二次世界大戦のことなのかな、と思ってしまいそうだけど(私だけ?)、扱っているのは、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、満州事変と日中戦争、太平洋戦争であり、日本が当事者となった19世紀末から20世紀中盤までのほぼ半世紀にわたる「戦争」を対象としている。本書は、これらの戦争について著者が高校生を相手に行った5日間の講義を文字に起こしたものだ。
 日本国内の政治家や軍人などの思想だけにとどまらず、ヨーロッパ諸国やアメリカ、ロシア(ソ連)、中国や朝鮮といった国々の思惑をも取り込みながら、日本が戦争に向かっていった経緯を生徒との対話を通じて語っている。ときに地図などの図表も使い、地政学的な観点からもわかりやすいように解説する。
 戦争が悪だとか善だとか、あるいは日本人が悪だとか善だとか、そういう視点とは一線を画した歴史的事実を追う姿が感じられる。私たちが中学、高校で習ってきたような、ただ年表と事件だけを覚えさせられたのとは違う、もっとずっとたくさんのかけひきや思い、偶然と必然の混交によって歴史は作られてきたのだな、と目から鱗が落ちた。この本は結構な分量のある文庫だけれど、それでもここには書ききれなかった多くの人たちの、星の数ほどの思想が裏には隠れているんだということを、十分に読者に想像させてくれる一冊だと思う。逆に言えば、この本に書かれていることは、これはこれで事実を丁寧に集めたものだけれど、ここでは拾いきれなかった事実もまたたくさんあるんだから、みんなもっと歴史に興味を持って勉強して、深い理解につなげていってね、という温かくも強いメッセージを感じる。おそらくこの本は、日本人が戦争をせざるを得なかった理由について生徒に解説しているというよりは、歴史を解読する楽しさを生徒に伝えることに主眼を置いているのではないだろうか。