岩波新書
この本のタイトルを見て、「今の子どもたちは学力が下がっているのか?」と早合点する人もいるかもしれない。しかし、実際にはそのようなことは書かれていない。
本書は、学校の授業についていけなかったり授業内容を理解できなかったりする生徒がどれくらいいるのかについて解説し、その原因を分析・考察している。
著者は、知識量の問題ではなく、「生きた知識」を持つことが重要だと主張している。
え?ここで疑問。だったら知識量と関係があるんじゃないの?
私の説明が不十分だったかもしれない。本書では矛盾したことは言われていないので、ぜひ読んで確認してみてほしい。
さて、帯には『「記号接地」がひらく学びの未来』とある。この「記号接地」が、「生きた知識」と関連しているわけだ。
話が難しくなってきたので具体的な例を挙げようか。
例えば、1/2と1/3のどちらが大きいか分からない子供が多いという。成績が下位の子供たちは、学年が上がっても劇的に理解が深まることは少ないようだ。その理由は、「1」という概念や分数の理解が欠けているからだ(と書いてあった気がする。かなり要約してます)。
これらの分析は、著者が作成した「たつじんテスト」の問題文と生徒たちの解答に基づいている。本書の大部分はこのテスト結果をもとにしており、現在の教育の問題点や改善案、さらには、急速に発展しつつあるAIとの付き合い方についても意見が述べられている。
本書が対象としているのは小中学生だが、彼らが大人になったとき、果たしてこのまま世の中がわからないことだらけのままなのか、それともどこかで学ぶ機会があるのかと考えさせられる。
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