資本主義は私有財産、自由契約、自由市場という特徴を持つけれども、資本主義社会だとか単一の経済システムとしての資本主義は存在しないのだと著者はいう。だから社会主義や共産主義と同列の概念ではないと。
そして、今までは私有財産、自由契約、自由市場にちょっとした規制を加えて自由民主主義は成り立ってきていたけれども、これからは資本主義を倫理あるいは道徳という概念で縛る社会が必要なのではないかと論じ、その実践方法を提案している。
とはいえこの本は実に読みにくい。原文が悪いのか訳が悪いのかはわからない。同じ単語なのに文脈によって全く違う意味として書かれていることがままあり、著者の主張が一体何なのか追えないことが度々あった。
さらに、絶対的に正しい倫理(道徳)があるということを、無批判に主張していることにも違和感があった。著者が正しい倫理として挙げている例がどうして絶対的に正しいと言えるのか、私にはよくわからなかった。
そして最終章で述べている倫理資本主義の実践方法は、ユートピア的で現実には実践へのハードルは高いように思えた。結局は少数の理想主義者による社会への締め付けを助長するだけだし、おそらくは多くの反対者によってその実践は実現できないだろう。
今は、というか今までもずっとそうだったのかもしれないけれど、混沌の時代が続いていて、自分勝手な意見がはびこりうまくいっている世界だとは言えないのだと思う。世界のあちこちを見ても戦争はやまず、資産や生活の格差はひどくなる一方であり、生活者の不満はたまっている。
そんな中、世界を変えるためのいろいろな意見が出てくることはいいことだ。それぞれにメリット・デメリットはあるが、それらを理解したうえで各々の生活者が様々な考えに触れながら、社会を変えていくという行動を起こしていくことが大切なのだと思う。
そのためには、国家等が情報統制等をすることをやめ、万人がすべての情報にアクセスできる世界が実現していることが重要なのではあるが。
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