思潮社
私は現代詩どころかふつうの詩ですら読んでも理解できない。頭の中にイメージがまったく浮かばないのだ。
そんな私がこの本の表紙を見て、これを読めば現代詩が理解できるようになるんじゃないかと思ったのが、本書を手にした動機である。
話は豊崎と広瀬による対談によって進む。
多数の詩をお互いが持ち寄り、それぞれの解釈を述べていく。もちろん原詩の本文はきちんと掲載されている。だから私も、気に入った詩を見つけたときは本のタイトルと著者名をメモしながら読み進めてみた。
読み進めていくと妙なことに気づく。同じ詩を読んでも、両者の解釈がまったく異なることが多いのだ。そして、その解釈の多義性・多様性こそが現代詩の醍醐味のひとつだと、二人とも考えていることがわかってくる。
まじか。現代詩は解釈の正解がなくてもいいのか。それじゃあ「論理的に」私がこれまで詩を理解しようとしていたこと自体が的外れだったのか、と愕然とする。
二人は現代詩のほか、ポエム、歌詞などについても対話を広げている。特に歌詞との比較については、私もなじみの深い分野であるので楽しく読むことができた。
全体として、現代詩の立ち位置がどこにあるのかなんとなくわかったし、興味深い詩人を数人見つけることができたことはよかった。今後、何人かの詩集を買ってみようと思う。
とはいえ不満点がなかったわけではない。ちょっと列挙してみる。
- カッコいいという言葉がたくさん出てくるのだが、どこがどういう点でカッコいいのかさっぱりわからない。感性に訴えるのではなく、理性にも訴えてほしかった。
- 本書の中では「ポエム」と「現代詩」を明らかに区別して議論しているのに、タイトルでは両者が同じものを示しているように受け取れる。著者の見解を聞きたい。
- 対談者二人のうち、広瀬に関してはほぼ頷ける内容だった。しかし豊崎の発言については、多少攻撃的ということもあってか、不快に思ったり否定的にとらえたりすることが多かった。まあこれは趣味の問題かもしれないけれど。
- やっぱり私には現代詩に対するハードルは高いのかなという再認識。
以前、現代音楽がよくわからなかったころ、それについての解説をいくつか読んでみたことがある。そうすると、現代音楽が何を目指し、どうしてこういう系譜をたどってきたのかということを多少でも理解することができるようになった。
しかし、現代詩については本書を読んでもまだ靄の中である。これからいくつかの現代詩集を読んでみようかと思っているが、それによって私が沼に入ることができるのかどうか、少しだけ楽しみである。
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