アブダクション - 仮説と発見の論理/米盛裕二

 勁草書房

推論の方法として、帰納と演繹という言葉は高校くらいで習ったことがあると思う。

「アブダクション」はそれ以外の第3の推論みたいな位置づけ。この本では、パースという人の著作や思想を元にしてアブダクションを解説している。

帰納、演繹、アブダクションと並べると、なんかちぐはぐに感じません?アブダクションだけカタカナ。これを仮説形成とかリトロダクションとかいう人もいるんだけど、どっちにしても日本語としてはしっくりこない。

でも英語にしてみると、どれも同じ分野だということがよくわかる。

  • 帰納:induction
  • 演繹:deduction
  • アブダクション:abduction
ね、とっても似てる単語でしょ?

ただ、どの言葉もよくわからない人が多いだろうから、私が勝手に例を作ってみました(アブダクションだけ本書に載ってる例)

帰納
うちのペットの猫は7匹いるんだけど、みんな「にゃあ」と鳴く。
→だからすべての猫は「にゃあ」と鳴く。
(つまり帰納は必ずしも正しくない推論です)

演繹
うちのペットの猫7匹のうち6匹の子猫は、もう1匹の猫ミケから生まれた。
→だからうちの子猫6匹は、かつてミケのお腹の中にいたことがある。
(つまり論理的には絶対正しくなります。数学はまさに演繹の塊)

アブダクション
ニュートンはあるときリンゴの実がリンゴの木から地上に落ちるのを見た。
→だからすべての物体には万有引力が働いている。
(かなり突拍子のない推論になってます。帰納よりももっと間違ってる可能性の高い仮説を立ててます。万有引力の法則はほぼ合っているんでしょうけど)

なんとなく雰囲気がつかめたでしょうか。このブログは勉強のブログじゃないのでこの辺でやめときます。

で、アブダクションというのをパースという人が提唱したんだけど、最初はそれに対して否定的な意見を持つ人が多かった。でも科学の発展にアブダクションは欠かせないよね、という話に今は変わりつつある(こんなこと本の中に書いてなかったらすいません。私はそう解釈しました)、というようなことを本書では概説してます。

おもしろい本でした。

ただ、途中までは読者に我慢を強いる本でもあります。

だって途中まで「アブダクション」の定義とか意味を全く説明しないで、「アブダクション」という言葉を使い続けるんだもの。

アブダクションについてなんとなくでも聞いたことがあるのであれば我慢しなくて済むんですけどね。

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