教育評論社。副題「空間と時間から考える哲学」
全2章からなっている。
- なぜ鏡は左右だけ反転させるのか
- なぜ私たちは過去へ行けないのか
1章は、鏡は上下は反転させないのに、どうして左右は反転するの?という話題。
不思議なんですよね。朝起きて寝ぼけた顔で鏡を見ると、頭は上にあって足の方は下にある。なのに右目は左目になって、左目は右目になっているように見える。
鏡の上下が関係あるのかなと思って、姿見の前で右の腹を下に寝転がってみる。すると、鏡の上の方にある左肩は右肩になっていて、鏡の下の方の右肩は左肩になっている。で、鏡の右側の方に映っている頭はやっぱり上に見えるし、左側に映っている足は下に見える。
ん?どういうこと?鏡の上下は関係ないんだ。
というわけで、この現象の不思議さはわかっていただけただろうか。
著者はいろんな哲学者の説明の仕方を披露して、最後には自分の考えを述べている。キーワードは「重力」。
実はここの結論を読んで驚いた。
この話、まだ決着がついていないんだ!
私としては、ガードナーによる「鏡は上下左右は反転させてなくて、前後を反転させているだけだ」という言論までは納得できた。しかしながらそのあとの著者の議論がどうにもややこしくて、騙されているような気がして、「重力」のせいだとする結論にも完全には納得できていない。
皆さんがこの議論を読んだらどう感じるのだろう。
第2章。過去へ行けない話。
ターミネーターを持ち出したりして、読者を引き込む工夫をしている。私はバック・トゥ・ザ・フューチャーの方が馴染みがあるんだけどな、と思ったのはどうでもいい話。
さて、本の中身。
うん、わかるよ、言いたいことは。確かに理屈としてそういう議論は成り立つよね。でもなぜか私の心を打たないのは、時間とは何か、ということについての科学的理論に全く触れられていないせいだ。たぶん。
結局この議論にも決着がついていないようだ。
うーん、残念。こっちも納得できなかった。読書体験自体は面白かったんだけどね。
哲学と科学って根は一緒で、途中から独自に発展してきたイメージがある。両者とも相手に対して影響を与えつつ、近年では哲学の方から科学へ歩み寄ってきたイメージもまたある。最近では科学的にほぼ決着のついている議題について、哲学ではそれ以上突っ込んでいない気もする。科学で説明できていないところに哲学的議論の面白さがあるというか。
とはいえ「科学とはなにか」ということを考える「科学哲学」みたいな分野もあって、いろいろと奥が深い。今後もいろいろとアンテナを張っていきたいなあ、と思った次第です。最後は本書とは何の関係もない話をしちゃいましたね。すいません。
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